日本農村生活学会の活性化に関わる答申
日本農村生活学会の活性化に関わる答申について(要約)
平成13年3月22日
組織運営・研究企画委員会
組織運営委員会と研究企画委員会を統合した組織運営・研究企画委員会(以下、本委員会)の第1回の会合に対し、小泉浩郎日本農村生活学会長(以下、会長)は、日本農村生活学会(以下、本学会)の今後の活性化方途について以下の2項目からなる諮問を行った。
諮問は、①研究課題の重点化と取りまとめを図ること、②会員の拡大を図ることの2項目からなる。
会長諮問を受け、本委員会は4回にわたり諮問内容について検討を行ない、具体的な活性化方策を取りまとめ、平成13年3月22日に答申を行った。さらに平成13年度第一回理事会において答申を報告したところであるが、このたび、HPに答申の要約を掲載するものとする。なお、本答申は、「答申」、「活動報告」「答申の具体的内容」「別添資料」から成る。
今後は、本答申を受け、可能性のあるものからフレキシブルかつ速やかに具体的な対策を講じることが重要である。そのためには、会員一人一人の主体的な参画が必要不可欠であると考える。今後とも会員の皆様の積極的な活動への参加をお願いしたい。
<基本方針>
1.本学会のあり方
会則第4条に掲げる本学会の目的と農村生活に関わるテーマについて研究と普及とが連携協力しあうと言う本学会の特徴を活かすことを将来的な学会のあり方とし、答申へ向けた3つの戦略を設定した。
2.3つの戦略
①対外的な情報発信と情報蓄積を積極的に行ない、学会の独自性を強調する。
②研究大会の企画内容を見直し、会員ニーズを充足するとともに会員拡大を図る。
③戦略に沿った方策を実行するに際し、関連して生起する課題をあわせて検討する。
<内 容>
1.成果の社会化
1)シンポジウム成果の社会化
これまでに主催した全国大会・支部大会の成果の再活用を行い、食料・農業・農村基本法(以下、新基本法)下の農政や農業研究に対して提言することは、本学会の社会的責務である。そこで、過去のシンポジウムテーマを分類・整理し、今日的な成果を抽出し、なんらかの発信媒体に取りまとめる。
なお、過去のシンポジウムテーマからは「活性化」「女性」「交流」「高齢」「起業」「協定」等が、また会誌の論文タイトルからは「労働」「作業」「改善」「環境」「健康」「食生活」等が重要な成果素材として抽出できる。
2)ハイパー用語辞典の作成
農村生活研究は、総合的、先見的でもあるとの評価を得ている一方、全貌がつかみにくく、成果が一過的であるとの意見も聞かれる。そこで、本学会の過去の研究領域を明示し、現在に至るまでの変遷が逐次理解できる取り組みとして、過去及び今後の会誌に掲載される報告のキーワードに対して著者自らが説明を加えた用語集「ハイパー用語辞典」を作成する。
3)会誌での支部大会特集
全国大会と異なり支部大会は、「支部だより」として事務報告が会誌に掲載されるのみであった。また、支部大会の記録の保存体制は支部によって異なっており、今後の散逸も懸念される。そこで、支部大会テーマを相互に参照でき、記録を保存する取り組みとして、会誌での支部大会特集を検討する。
2.会員の拡大へ向けた大会企画の見直し
1)ポスター賞の新設
個別発表が研究内容そのものを重視するのに対して、ポスターセッションは研究内容と発表技法のバランスを重視する。今後も発表技法の向上が求められていくこととなるが、現行の学会賞にはそれを顕彰する賞が見当たらず、技法を向上させる意欲に十分応えられていない。そこで、大会時のポスター発表の中から、研究内容と発表技法の両面で優れていると認められるものを表彰する制度を新たに創設する。
2)ワークショップの開催
農村生活に関する研究や活動は、現場での実践や活動を通じて体得する技法が多いことから、議論と見学と実践が結合した活動を行なえる場が必要である。そこで、自発的に参加した者同士が自由に討論や実践交流を行なう場として「ワークショップ」を開催する。
3)セミナーの開催
これまでの全国大会は、新たな問題提起や新知見、新たに開発した手順や手法等を発表し議論する場であった。しかし、これらの議論の他に、既に確立されたノウハウや手法を知識として修得する場も必要である。そこで、会員の研修意欲を充足するため、研究者や普及OBが講師となって小集団規模でノウハウや手法を習得するセミナーを開設する。
4)セッションの開催
これまでの全国大会の発表では、個別報告やポスターセッションのように発表者と聴衆が区別されていた。しかし、会員の過半近くを占める普及サイドの中には、研究面では未着手の問題であっても、現場で直面している問題について話題提供することで、その話題についての情報を収集したいという問題意識がある。そこで、相互に情報を交換したり議論できる小人数規模の会合としてセッションを大会の中に設け、話題提供のテーマを事前に公募する。
5)次回シンポジウムテーマの公募
全国大会でのシンポジウムテーマは、これまで、大会実行委員会案を5月の理事会で承認した後、会員に通知していた。そこで、当該テーマについて会員が事前の調査研究を行える時間を確保するため、大会開催中に次年度の大会シンポジウムテーマの候補素材を大会参加者から公募し、次回テーマを早期に決定して予告するシステムを検討する。
3.学会活動の活性化へ向けた課題
1)新たな研究課題の重点化
会長諮問では、本学会の過去の蓄積を今日的観点から取りまとめ発信することを提起しているのが、新基本法や男女共同参画基本法等を踏まえた
新たな研究課題の掘り起こしも重要である。そこで、本学会の将来的な研究課題の掘り起こしと重点化を議論する場の設定を検討する。
2)学会運営体制の見直し
これまでの本学会の事務運営は、国立試験研究機関の研究室が主に担ってきた。しかし平成13年4月の独立行政法人化と組織再編に伴い、今後も現行の事務運営体制が継続できるかどうか予測は難しい。本答申を実現するためにも事務運営コストの過剰集中を避けることが必要であり、学会運営体制の見直し策を検討する。