会長挨拶

2019年度を迎えて

日本農村生活学会会長 安倍 澄子

 

 昨年12月に札幌市で開催された北海道大会時の総会において、2019~20年度の運営を担う理事が承認され、若干名の新旧交代となりましたが新たなメンバーを加え理事会が発足しました。この新体制の下、会員との交流を図りながら、学会活動を進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今年は10月19~20日に明治大学駿河台校舎において、日本農村生活学会大会第67回大会(呼称を若干変更)を開催します。すでにHPにおいて周知を図っておりますが、本学会の大会は開催地の特性をふまえたテーマのもとシンポジウムや、ラウンドテーブルを設定しており、今年は女性農業者に対する政策や実態について、今日的問題点を考える大会にしたいと思っております。多くの会員の方々の参加を期待しております。

 今年も昨年に続いて猛暑に悩まされ、異常気象の状態が恒常化することが危惧されます。この間の気候変動の状況からするとその対応は猶予のない課題となっています。

 この環境問題のグローバル化にともない、国連の持続可能な社会づくり推進において、食の問題が大きな比重を占めていることに注目し、その地平から、国際社会の食の安全、生物多様性に基づく農業のあり方、環境保全の動きと響き合い、国連が提唱する「持続可能な開発目標」への女性の参画、次世代への継承への道をひらく展望が、今日求められていると考えます。

 周知のように、環境問題は1990年代に入り深刻化したことで、1992年「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)で「持続可能な社会」に向けて、国際的な取り組みが始まりました。

 2015年の「国連持続可能な開発サミット」において、経済、社会および環境の3側面を調和させるため、17の持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。このSDGsのうち、当学会との関連では、目標2「食の安全確保と栄養改善」と目標5「ジェンダー」が注目されますが、それに、目標12「持続可能な消費と生産」の視点も加わります。

 持続可能な発展とは、将来の環境や次世代の利益を損なわない範囲内で社会発展を進めようとすることです。先進国の過剰消費型生活様式が環境に大きな負荷を与えていることから、環境と開発を統合するという観点で、消費と生活様式のあり方についても取り組む視点も重要です。

 ある女性農業者が、「従来の農業経営においては、農業者は農産物の栽培に専念し、販売をその道のプロパーへ委託していた。が今日では、作ったものをどのように、誰に売るのか、消費者はどのように調理して食しているかを視野にいれた営農計画が必要となり、また、経済効率や採算ベースのみを重視するのではなく、作る環境や方法も問われるようになった」と述べていました。今後、農村地域・農村生活の問題や課題を考えていく際に、SDGsの具体化、目標に向けた行動計画の策定等について、本学会においても取り組んでいきたいと考えています。

(2019年8月14日記)


2018年度を迎えて

日本農村生活学会会長 安倍 澄子

 

 2018年度を迎え、もう6月となりました。昨年度は、事務局業務を国際文献社に委託することとなり、事務局体制が大きく変わったことから試行錯誤を続けながら本学会の運営を行ってきました。中でも、10月の東京農業大学で開催した第65回研究大会時における総会において、今後の学会運営の円滑化のために会費値上げを承認していただきました。会員の皆様のご理解のもと、今後の円滑な学会運営の目途が立ち新年度を迎えることが出来ました。

 昨年度末に「人文社会学系学協会男女共同参画推進連絡会」(GEAHSS 略称ギース)発足の連絡を受け、本学会では、ギース担当を粕谷美砂子理事に引き受けて頂きました。今後は、男女共同参画推進の視点での学会活動を、他学会と連携しながら進めていくこととなりました。

 今年の研究大会は、12月8~9日にかけて北海道札幌市で開催することになります。随時、ホームページを通じてお知らせをしていきますので、多くの会員の参加を期待しております。

 昨今、気候変調が続く中で、地震国日本を痛感する出来事が起こっています。震災にあわれた女性農業者の方が、『大地震の脅威や自然災害に脅かされながらも、今年も無事に作物が育ちますようにと願い、日々を積み重ね、未来を築いていかなくては』との思いを綴っていました。

 本学会の活動をどう進めていくのかを考えた時、自然との共生による持続的な発展に向け、「食とくらし」を一つのキーワードにあげたいと思います。「食とくらし」をつなぐため、生産の場の保全・維持に勤しみ、食材を提供し、その生産活動の担い手である人材を養成する。あわせて、日々生活する場としての地域社会の維持は、その地域で暮らす人々の日々の営みによって築かれています。このような場を本学会は研究対象としています。

 また、政策的な提言においても、生活者視点からの課題発見や問題提起の必要性を感じています。地域における日々の営みとかけ離れて、生産活動は成り立ちません。自然との脅威と向き合い、その摂理に従いながら、日々の積み重ねを繰り返すことが、未来を築いていくことを肝に銘じて、農村生活研究に取り組むことを本学会の基盤として確認しつつ、今後の学会運営に携わっていきたいと思っています。

(2018年6月22日記)


平成29年度・会長として4期目を迎えて                  

平成29年 日本農村生活学会会長 安倍澄子

 

 私の会長就任が23年度であったことから、平成29年度は4期目を迎えたこともあり、年度初めの挨拶をいたします。

 平成28年度は、学会事務局を担当していた(一社)農山漁村女性・生活活動支援協会の解散(平成29年3月末日)に伴い、本年1月より国際文献社に業務委託をすることになりました。

 移行期における業務滞りが心配されましたが、総務事務局長の宮城副会長をはじめとする役員皆様および新事務局スタッフのご尽力で、無事に新年度を迎えることが出来ました。まずは、心より感謝し、御礼申し上げます。

 さて、日本全体が舵取り困難な状況の下、格差社会の進行など先行き不安な中、今後の学会運営についても、課題が山積みとなっています。平成24年度に共立女子大学で第60回の研究大会を実施し、一つの区切りとしました。その後、茨城県、群馬県、千葉県、埼玉県での大会では、会場となる大学や担当県の後援をえながら、各大会において大会テーマを設定し、シンポジウム、ラウンドテーブルによる会員参加型で農村生活問題への深化を図る取り組みを進めてきました。このような中で手作り感あふれる研究大会を開催することが出来たことは嬉しい限りです。これからも、このような形が望ましいと考えています。今年は、10月14~15日、東京農業大学で開催されます。多くの方の参加を期待しております。

 ところで、昨今の農業・農村生活・農村社会をめぐる状況の中で、当学会の取り組みについて、理事・役員はもとより、会員の皆様から意見をあげて頂きたく思い、私見を以下に述べたいと思います。

 1つは、農村生活を研究対象とする学会であるが故の「農村生活学会のシーズ」「らしさ」についてです。農業・農村は、生産と生活が未分離であること、生産の場と生活の場が空間的に重なり、経営と生活の営みが地域社会と不可分な状態で営まれています。生活問題と地域社会との関連が密接な関連を持っていることであり、経営や生活課題が地域課題と連動する点での今日的課題は何かということです。この点では、地域協働の共助・公助・自助、公益・共益といった協同組織のあり方や、多様化する社会での人々のつながり方、ネットワーク論の新たな展開が必要だと考えています。あわせて、農福連携の課題についての研究の深化、フィールドワークでの調査分析・検討等が必要と考えています。

 2つは、担い手層の高齢化と次世代の養成に向けた取り組みを考える時の農村社会の閉鎖性から生じる「若手の力」が活かしきれない状況の打開策についてです。まずは、当事者からの意見収集やフィールドでの農村での対応収集など研究をどう積み上げていくのかという点です。

 3つには、『田園回帰』といわれている現象をどう理解していくのかということと、受け入れ側の対応についての事例収集や、課題のあり方の検討です。これらが地域性を持っているのか、行政の対応策についての提案などを当学会として発信できればと思います。

 以上、これだけではありませんが、今後の検討課題として大切と考える三点をあげました。

 会員の皆さんからのご意見、会員同士の意見交換の活発化を希望し、新年度を迎えての挨拶といたします。 


  会長就任にあたって

平成23年 日本農村生活学会会長 安倍澄子

  

 この度、日本農村生活学会の会長に就任しました。どうぞよろしくお願いいたします。
 はじめに、3月11日の東日本大震災とそれに続く原発事故で被災されている方々に心よりお見舞い申し上げます。未曾有の災害により深い悲しみや辛さを背負われている方もいらっしゃることと思いますが、食や農林漁業に精通されている農山漁村の女性の皆さんを始め、本学会員の皆さんとともに、被災された方々を支えるとともに、復興への取組みの協力や支援を行っていきたいと考えております。大変なときではありますが、大変なときだからこそ、力をあわせて、前に進んでいきたいと思います。


 その一つとして、宮城県の本学会員有志で構成されている東北農村生活研究フォーラムによって、「大規模災害にも負けない『農村の底力~自然と調和する暮らし~』を考える」をテーマに2011セミナーが、10月22日に宮城県名取市で開催されます。


 宮城県の沿岸南部は園芸を中心とする農業地帯であり、「人命や住居・家財だけでなく農業被害も甚大ではありますが、農業再開の意欲は強い」ものがあるとのことです。「今後もこの地域に暮らし、農業を続けていくためには、多くの恵みと同時に圧倒的な破壊力を持つこの地域の自然と、なんとか共存していくしかない。」わけですから、「被災農業者に『その時』『その後』や『今の思い』を」語っていただくとともに、「農村が蓄積してきた英知を結集して、災害からの一日も早い立ち直りの一助にし、この経験を全国や後世への伝言と」することを目指して開催されます。


 本学会としても、このセミナーの内容を11月末の全国研究大会において、セミナーに参加出来なかった会員を含めて受け止めて意見交換を行い、HPなどを通じて情報発信し、行動していくことを第1回理事会で確認しました。真摯に取り組んでまいります。
 ひるがえって、日本農村生活学会は、来年で60周年を迎えます。本学会は、「農村生活に関する研究の発展と成果の普及をはかり、農村生活の向上に寄与すること(会則第4条)」を目的に設立され、農村生活に関するテーマについて研究と普及とが連携協力しあうことを目指してきました。


 しかし、本学会を巡る状況が大きく変化してくるなかで、学会の意義や役割、他学会にはない独自性などが曖昧となってきている感があるとのことから、ワーキンググループを設立して、今後のあり方を検討してきました。平成21年度の中間報告をふまえた新体制が、この4月からスタートしたところです。


学会の維持発展施策を推進するための改革の2つの柱として、「1.実践と研究の相乗効果を活かしての現場の問題の共有化と情報交流を充実する」「2.協働姿勢による会員全員運営を展開する」を掲げて推進するとの答申でした。


 今後、この2つの柱をふまえて、北海道・北陸・関東の3支部活動も重視し、大切にしながら、日本農村生活学会の発展に微力ながら取り組み、前に進んでいくことを皆様にお約束して、私の就任の挨拶といたします。